VHSビデオテープの方式
ビデオテープは、アナログビデオ信号を記録するためのテープです。
テレビ信号がデジタル化される前は、テレビはアナログ信号で配信されていました。
電波に乗ったビデオ信号をそのまま映像化するため、受信状況によっては、ノイズの影響を受けたり、ゴーストが発生したりする繊細な存在でした。
そのビデオアナログ信号を記録するために開発されたのが、ビデオテープです。
ビデオ信号をそのまま記録できる「回転2ヘッドヘリカルスキャン方式」が開発され(1955年に東芝が特許出願)ました。
当時は、オープンリール方式によるVTRでしたが、各社独自のバラバラな規格に基づいていたため、互換性はありませんでした。
後に、Uマチックと言うカセット式のビデオテープを使用する企画が登場しましたが、価格的に庶民の手に届くものではなかったため、教育機関やホテルなどの限られた範囲での使用に留まりました。
そしてついに、1975年にソニーがベータマックスを発売、1976年に日本ビクターがVHSビデオデッキを発売し、家庭向けビデオ用として、VHSビデオテープがいっきに普及し始めたのです。
VHSの意味
VHSは、日本ビクター(現在のJVCケンウッド)が開発した家庭用ビデオ規格で、記録方式のVertical Helical Scan(バーチカル・ヘリカル・スキャン)の略称でした。
- 「Vertical」は、垂直のと言う意味。
- 「Helical」は、螺旋状のと言う意味。
- 「Scan」は、素早く入念に見渡すという意味。
「垂直で螺旋状にスキャンする」は、ビデオの2つのヘッドが、ビデオテープを垂直方向に螺旋状にスキャンして、ビデオ信号を記録するところをそのまま表現しています。
後に、VHSの定義を見直して、Video Home Systemに変更したとのことですが、見直す必要はなかったのではないか...と思っているのは私だけでしょうか?
ビデオテープは、巻き始め部分から、巻き終わりに向けて、進行していきます。
オーディオテープは、ヘッドに当たった部分に音信号が記録されているだけなのですが、ビデオテープは違います。
テープの上下方向を使って、斜めに走る螺旋状の記録部分を使って、映像信号が記録されています。
その斜めに走る螺旋記録部分が、テープが進行すると共に次の画面に進行していき、動画が構成されるようになります。
オーディオテープが、線状に信号記録しているのに対して、ビデオテープはテープの縦方向の幅を利用して、面で信号を記録しているのです。
VHSビデオテープの記録時間
VHSビデオテープは、もともと120分のテープ長で作られていたのですが、その後薄手のテープベースとすることで、長時間記録のできるものが登場しました。
用途によって120分よりも短いテープも存在し、そのバリエーションは多くありました。
市販されていたビデオテープは、30分から210分のものが多く、最長で240分のテープもありましたが、記録時間の長いテープは、テープ噛み込みなどのリスクが高く、敬遠される傾向がありました。
記録時間は、ビデオデッキのモードによって変わります。
標準のSPモードでは、テープスピードが33.34mm/sで、120分テープで120分記録可能。
2倍のLPモードでは、テープスピードが16.76mm/sで、120分テープで約240分記録可能。
3倍のEPモードでは、テープスピードが11.18mm/sで、120分テープで360分記録可能。
LPモードやEPモードでは、画質や音質がかなり落ちるので、記録時間と画質のトレードオフに迫られた記憶のある人が多いのではないかと思います。
ビデオテープの物理的な長さですが、120分テープで、スピードが33.34mm/sですから、33.34mmx60秒X120分=240,000mm で、240mのテープ長と言うことになります。
VHS-Cビデオテープ
VHS-Cは、VHS-Compact (ビデオホームシステムコンパクト) の略で、VHSの小型版です。
当時、ポータブルビデオの小型化を進める上で、VHSテープの大きさが一番のネックだったのです。
そこで開発されたのが、このVHS-Cビデオテープ。
なんといっても、魅力的だったのは、従来のVHSフォーマットと完全互換なのに、カセットサイズが1/3となる点。
ポータブルビデオ用にはVHS-Cビデオテープを使って記録し、自宅のVHSビデオデッキで再生できるとあって、人気商品となりました。
サイズが小さいという事は、その分テープが少なくなって当然なのですが、標準の記録時間は20分と短め。
薄手のテープベースを使っても、最大40分と記録時間がネックとはなりました。
標準VHSと完全互換と言っても、専用アダプターを使用しないと、一般のVHSビデオデッキでの再生は出来ません。
また、テープがたるみやすいこともあって、子供にテープをいたずらされたりするケースも結構あったようです。
当時、8mmビデオが発売された頃であり、記録時間の短さやテープたるみの問題などで、8mmビデオに取って変わられた感があります。
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